「“余白”があるから、会話が生まれる」—大人のための空間設計術
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京都の街を歩いていると、ふとした路地の奥に、静かに佇む小さな店舗に出会うことがあります。間口は狭く、奥行きも限られているのに、なぜか窮屈さを感じない。むしろ、そこには凛とした空気と、店主の美意識が漂っていて、思わず足を止めてしまう──そんな空間に心惹かれます。
陶器が主役になる空間とは
陶器は、光と影、質感と色彩、そして手に取ったときの重みや温度までを含めて、五感で味わうものです。だからこそ、店舗空間は“背景”でありながら、陶器の魅力を引き立てる“舞台”である必要があります。設計では、まず空間のベースカラーにこだわりました。壁面には黒を採用し、什器や棚には白を組み合わせることで、陶器の色味やフォルムが際立つように構成しています。黒は静けさと深みを持ち、白は清潔感と余白を生み出す──この対比が、器の存在感を引き立てる背景となります。
照明は、温かみのあるペンダントライトを3灯配置。光が器に柔らかく落ちるよう、位置と高さを細かく調整しました。器の表情が変わる瞬間──それは、光が当たったときです。だからこそ、照明は“演出”の要。明るすぎず、暗すぎず、器が語りかけてくるような光を目指しました。
狭さを活かす設計の工夫
京都の店舗は、土地の制約からどうしても狭小になりがちです。しかし、狭さは決してマイナスではありません。むしろ、設計次第で“濃密な体験”を生み出すことができます。
空間に宿る“余白”の力
設計において、最も大切にしたのは“余白”です。器を並べすぎず、あえて“置かない”場所をつくることで、ひとつひとつの器が語りかけてくるような空気感を生み出しました。
余白は、見る人の想像力を刺激します。「この器にはどんな料理が似合うだろう」「誰に贈ろうか」──そんな思いが自然と湧き上がるような空間。それは、器と人との間に“対話”が生まれる瞬間でもあります。
店舗設計は、ブランド設計でもある
空間そのものがブランドを語ります。器の魅力を伝えるだけでなく、店主の美意識や哲学、そして京都という土地の文化までもが、空間に滲み出るような設計が求められます。
私たち工務店は、単に“形”をつくるのではなく、“物語”をつくる存在でありたいと考えています。素材の選定、照明の配置、什器の寸法──そのすべてに意味を込め、器が語りかける空間を丁寧に編み上げていく。それが、私たちの仕事です。
おわりに:小さな空間に宿る、大きな可能性
狭いからこそ、工夫が生まれる。限られているからこそ、余白が輝く。そんな京都の店舗設計には、無限の可能性があります。陶器が主役でありながら、訪れる人の記憶にも残る場所です。器を手に取った瞬間の高揚感、棚を眺める静かな時間──それらすべてが、空間設計によって支えられています。
これからも、私たちは京都の街に寄り添いながら、職人の想いと器の物語を空間に宿す設計を届けていきたいと思います
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